生成AIが当たり前となり、誰もが“そこそこの”成果を出せる時代。そんな中で──あなたは中小企業診断士として、経営者に価値を提供するために何で差別化しますか?
2025年7月19日の定例会では、この問いをテーマに、元電通のAIベンチャー社長を招聘し、顧客の裏側にある心理構造を読み解く最新手法や事例を学び、自分をプロデュースするワークショップを行いました。
講演1)AIと広告マーケティング~AI時代における差別化とポジショニングを俯瞰する~
講師:福田宏幸 博士(科学)
コピーライターやデータサイエンティストとして株式会社電通で活躍後、独立起業した福田氏が登壇。「誰もがAIを使うようになったら、広告はどう変わるのか」という視点から話が始まりました。広告会社の仕事は、メディア広告の制作にとどまらず、イベント運営や戦略立案、コンサルティングにも及びます。そこで求められるのは、他者と異なる視点や独自の発想です。
福田氏が2016年に開発したAIコピーライター「AICO」は、今日の生成AI活用の先駆けとなりました。AIが普及すれば広告は似通いやすく、平均的な成果しか得られません。だからこそ、「AIをどう使うか」という人間のクリエイティビティが鍵を握ります。そして、その源泉は一人ひとりの個性やキャリア(経験の積み重ね)から生まれる独自のポジショニングにあると教えて頂きました。


講演2)マーケティングのすゝめ ~顧客行動分析を用いた顧客満足の測り方~
講師:小泉昌紀(AIビジネス研究会 代表)
かつて消費者の購買活動はオフラインが中心。1980〜2000年代はテレビCMや雑誌広告が顧客行動を左右し、店頭での接客が満足度を決めていました。今やフィリップコトラーの最新刊『Marketing 6.0』が描く通り、SNSの口コミやECレビューが意思決定を左右するオンライン全盛時代です。今回紹介を受けたのは、欧米の先進企業で用いられている統計手法のSEM(構造方程式モデリング)。消費者の心に潜む「要因 → 態度(満足)→ ロイヤルティ」という見えない構造を読み解きます。
中小企業の現場から生まれた社会課題について具体的な事例の紹介がありました。
- エシカル購買:フェアトレードコーヒーを選ぶとき、重視するのはブランド、品質、価格、それとも倫理・環境か?
- オムニチャネル:製造業が提供するデジタルチャネルは、どのように購買体験で使われているのか?
- 朝食ビュッフェ:ホテル経営者は、環境とコストの双方の負担に悩まされながらも、消費者満足のためにビュッフェを提供してきたが,宿泊者の真のスイッチはどこか? →日経新聞の記事はこちら( https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP694144_X10C25A7000000/ )
データが顧客の心の動きをくっきり映し出し、課題解決への道がはっきり見えた瞬間でした。手に入れたのは、顧客ロイヤルティの仕組みを読み解く強力な道具。そして次の演習では、その視点を自分自身に向け、強みや価値を掘り下げる方法を身につけました。

ワークショップ1)自分プロデュース
講師:小泉昌紀(AIビジネス研究会 代表)
引き続き小泉代表の進行で、自身の差別化戦略を設計するワークショップを実施。SEMで学んだ消費者心理の要因分解を応用し、診断士が自分の強みをクライアント視点で炙り出し、自分の価値提案を定義。さらに、顧客ロイヤルティに結び付く要因をMECE(もれなくダブりなく)で整理する演習を実施しました。
ワークの中では「あ、これが自分の価値なんだ!」という発見が次々と飛び出し、強みや差別化ポイントが客観的に整理されていきます。最後には、「自分の価値をお客様目線で見られるようになった!」「明日の提案にすぐ使える!」といった、笑顔まじりの嬉しい声があがりました。 普段は意識しない自分の強みや価値を言語化する作業は、多くの参加者にとって新鮮な経験でした。完成したシートはチーム内で共有し、他者からのフィードバックを加えることで、より洗練された内容になりました。

まとめと所感)
今回の定例会を通じて、AIが広告制作を効率化する一方で差別化を難しくする現実と、その中での戦略的ポジショニングの重要性を再認識しました。また、消費者行動分析の手法や事例から、顧客ロイヤルティ向上に向けたデータ活用の価値も学びました。
「誰もがAIを使う時代」だからこそ、人間の洞察と創造性が競争力の源となります。この学びを活かし、クライアントの課題に寄り添いながら、AIとマーケティングを融合した実践的な支援を続けていきます。
参考資料:
・株式会社ちゃんフク(代表取締役 福田宏幸様)はこちら:https://wp.chanfuku.jp/
・小泉昌紀代表プロフィール(業績・事例の詳細)はこちら:https://researchmap.jp/masakikoizumi

文責:佐々木会員


