【2021年12月定例会】ものづくりDX特集

2021年12月18日(土)14:00~17:00にAIビジネス研究会12月定例会をリモート開催しました。

講演1)営業系システム導入の罠〜パッケージシステム導入の功罪〜

依田会員より、メーカーの営業部が業務管理用のパッケージシステムを導入した体験談事例を講演頂きました。

パッケージシステムは、「素早く導入できる」「初期費用を抑えることができる」のメリットがあり、テレビCM等で認知度が向上しているため導入検討する会社が増えています。その反面「自社業務を変更する必要がある」「ランニングコストがかさむ場合がある」というデメリットある点にも注意が必要です。

 今回のシステムは、顧客や案件ステータス等の営業情報を一元管理により業務を効率化するもので、そのためには各種情報の入力が必須でした。この情報入力が既存業務に追加されたことが利用者の大きな負担となり、システムが活用されない事態となってしまいました。この理由について、ユーザー側(営業部)と導入側(管理部)、各立場からの考察結果をご紹介いただきました。ユーザー側は「システムで解決したい業務は別にある」「このシステム導入によるメリットが不明」という考えを持っています。一方、導入側では「困りごとはあれだ!パッケージシステムで早急に改善できる」「経営トップの決定事項なので直ぐに導入を進めよう」と考えていたようです。このすれ違いを回避するためには、両者の事前事後の密なコミュニケーションが重要です。

また、システム導入に限らず、ユーザー側/管理側の双方が目的を共通認識し当事者として仕事に関わっていくべきですね。更に、どのように業務を変革するか、どのようなシステムにするかは、一般解がない経営課題であり、診断士が積極的に関与していくべきものと再認識しました。

講演2)飲料業界のデジタル最前線

飲料メーカーに勤務する大金会員より、飲料業界全般のデジタル技術活用について最新情報を講演頂きました。

 従来はベテラン社員のKKD(経験、感、度胸)に頼っていた各種工程や作業を、定量化、デジタル化、Al活用で変革する事例を多数ご紹介いただきました。

 特に印象に残った事例は「デジタルツイン」の活用です。デジタルツインの定義は「リアル(物理)空間にある情報をIoTなどで集め、送信されたデータを元にサイバー(仮想)空間でリアル空間を再現する技術」です。特に、製造業の設備保全・品質向上・試作コスト低減などでの活用が期待されている技術です。たとえば設備保全では人が検査し不具合を予測しますが、デジタルツインでは、センサー等で取得したデータを基にデジタル空間でリアルタイムに故障予知ができます。まさに未来の工場を予感させる技術であると感じました。

講演3)ものづくりのDXを推進するファクトリーサイエンティストの講座体験記

笠置会員より2021年5月〜6月に受講した講座体験記と、中小企業のIoT・スマートファクトリー導入事例をご紹介いただきました。

ファクトリーサイエンティスト講座は、「データマネジメント力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」を有し、工場責任者の右腕となりデジタル化を推進する人材を育成する内容になっています。

講座は、アウトプット重視のカリキュラムで、参加者が工場で使用できるシステム構築まで完了できる内容となっています(詳細:https://www.factoryscientist.com/curriculum)。経営の専門家である中小企業診断士がファクトリーサイエンティストのスキルを身につければ、中小製造業に今まで以上に大きく貢献できます。

 加えて、具体的な中小企業の導入事例として、毎日180分の機械見回り作業低減による効率化、活動基準原価計算(Activity-Based Costing)の見える化による意思決定精度向上、工作機械のムダ時間(待機/停止)測定により改善箇所の特定などをご紹介いただきました。

最後は、依田・大金・笠置の3会員の講演でインプットされた情報をもとに、「中小製造業の抱える経営課題をIoTやデジタルツインで解決する」演習にチャレンジです。今回は、食品・機械・建築・化学の4チームに分かれて約30分間議論を行いました。自分が参加した食品チームでは、飲料メーカーを想定し、安全性担保、省人化を中心に検討しました。アウトプットによる知識の定着だけでなく、バックグランドが異なるメンバーのアイディアや気づきは、刺激的で毎回有意義な時間となっています。

次回の定例会は1/15(土) 14:00-17:00「スマートシティ特集」です。

私も発表予定ですので、みなさまの参加をお待ちしております。

文責:大槻会員