【2024年6月定例会】リスキリング特集

2024年6月15日にZoomにて、日本マイクロソフト株式会社Consumption Excellence Lead 浅田恭子様をお迎えして、リスキリングをテーマに定例会を開催しました。


講演1)DXリスキリングをはじめよう!

AIビジネス研究会の代表、小泉会長による講演が行われました。テーマはリスキリングの重要性です。小泉会長は、リスキリングの定義を「新しいスキルを習得し、時代の変化に対応するプロセス」とし、AI時代における新しい職業やデジタル化への対応の必要性を強調しました。

 “自発的な学びは、年収の向上や仕事での成長実感に繋がる”

特に生成AIの登場で、バックオフィスなどの定型業務がAIに置き換えられやすくなり、人員の配置転換が進んでいることを指摘しました。一方で、AIやデータサイエンス、IoTなどのデジタルスキルを持つ従業員が少ない企業では、AI活用が難航しているといいます。 このため、社内でのデジタル人材の育成が求められています。

AIビジネス研究会は、会員のリスキリングを全面的にサポートし、7月から業務に直結する生成AIの講座を開始する予定です(図1)。実践的なスキルを身につけることで、現場でのAI活用にぜひ活かしてほしいと思います。

図1:明日から使える生成AI連続講座 開催スケジュール

講演2)マナビDXクエスト参加報告

酒井会員からは、2023年8月から2024年2月まで参加した経済産業省主催の「マナビDXクエスト」についての報告がありました。このプログラムは、デジタル人材育成を目的として社会人や学生を対象に無料で提供されるものです(図2)。

 “このプログラムでは、企業データを用いたケーススタディや地域中小企業との協働を通じて、実践的なスキルを磨くことができた。”

プログラミングスキルは不要で、Excelの関数やグラフ作成スキルがあれば問題ないということです。 「ChatGPTなどの生成AIを活用して、課題分析や提案の壁打ち、画像生成、コード作成などが行え、多くの実践的なスキルを身につけることができた」と彼は続けました。また、参加者同士でチームを形成し、互いに刺激し合いながら学べる点や、Slackを通じて優秀なデータサイエンティストから指導を受けられる点も、このプログラムの魅力だと語りました。 2024年度のプログラム募集は6月から開始されるので、興味のある方はぜひ参加を検討してほしいと思います。

図2:マナビDXクエスト概要

講演3)将棋AIの今 ~将棋AI「水匠」から自己改善を試みた~

趣味で将棋を嗜む青木氏からは、将棋AIの技術的進化とその応用についての報告がされました。

青木氏は、本テーマを選んだ理由として、AIを活用できる診断士とそうでない診断士との二極化が生じるであろう未来予想が、現在のプロ棋士が置かれている状況との相似形であり、それを考察することが、本研究会が掲げるコンセプトに近いと感じたことだと語りました。

羽生善治氏によると、棋士は強くなるために盤面の美形・愚形といった美意識を磨く。AIが網羅的に計算する一方で、人間は盤面の美的感覚を基に手を選ぶ。そのためAIは、人間の美意識とあわない違和感のある手を提示する傾向があるそうです。IBMのDeepBlueやオープンソースのBonanzaといった将棋ソフトの開発経緯やアルゴリズムを紹介した後、bonanzaの発展形である将棋AI「水匠」の開発者杉村達也氏が趣味で将棋AIの開発を進めた経緯や、AI同士の対戦により30億から50億の局面を学習する点をはじめ、従来型AIとディープラーニング系AIの違いについても詳しく解説されました。ディープラーニング系AIは棋士の感覚に近い「大局観」を掴みつつある一方、人が思い至らない指し方・危険な手を怖れないAIの特徴があることや、将棋AIを使った対戦の鑑賞や自己改善に用いる例なども紹介されました。

最後に、診断士がビジネスとしてAIをどのように活用できるかについて、AIの提言を顧客に合わせて説明する能力や、顧客の感覚に寄り添った提案の重要性が大事だとの示唆が示されました。

図3:将棋ソフトの開発経緯とアルゴリズムについて

講演4)Microsoft社員によるCopilotの便利活用法

日本マイクロソフト株式会社Consumption Excellence Leadの浅田恭子氏より、MicrosoftのAI戦略とMicrosoft 365 Copilotの紹介がありました。

Microsoft 365 Copilotは、ユーザーの隣に座って支援する副操縦士Copilotとして、世界中や組織の様々な知識へのアクセスに役立つ新しいUI(窓口)と位置付けられています。今後、AI機能はMicrosoftのあらゆる製品に搭載され、ユーザーが日常の業務を効率的に進めるための支援を目指します。会議やドキュメントの要約、メールの下書き、修正、翻訳など、さまざまなCopilot for Microsft365の活用シナリオが提示され、Microsoft社員としてCopilotの支援を受けながら自身の業務を効率的にすすめる様子が、時折デモを交えながら、ダイナミックに紹介されました。

グローバルに展開する企業や、時間や場所に囚われない働き方が推奨される現代では、会議の録画は必須であり礼儀であると深田氏は語り、参加できない会議であっても後から参照できる仕組みと機能が紹介されました。会議の要約や翻訳、話者ごとの発言タイムラインで重要な発言のみ参照できるなど、録画をすべて見なくてもキャッチアップできるしくみ、更にアクションアイテム作成や会議の振り返りを含めた効率化の様子などが示されました

企業内の閉じた環境で利用する場合には、独特な社内用語や社内への申請方法など、今まで探し回らざるを得なかった情報をまとめて提示したり、オンライン会議の要約やタスク整理で活用するなど、高度なセキュリティ対策の下で企業の機密情報を守りながら今までにない情報整理と効率化が実現できる点が強調されました。

最後に、膨大な情報から価値を発見し、オフィス業務の効率化による生産性向上を実現し、AIの支援によるイノベーションの創出に至るステップであるAIトランスフォーメーションについて触れて、発表は締めくくられました。Open AI社と手を組み、ビックテックの一翼として世界を牽引し続けMicrosoftの壮大な戦略とその実現性について実感できる1時間でした。

文責:笠置会員、堀野会員