【2024年9月定例会】本郷バレー特集パート1

2024年9月21日にかながわ県民センターにて行われたAIビジネス研究会では、東大発スタートアップとの本郷バレー特集と明日から使える生成AI連続講座が開催されました。おふたりのAIに馳せる思いや今後についてお話を伺いました。

右)株式会社2WINS代表取締役 Co-CEO小川 椋徹様

東京大学工学部機械情報工学科 卒業
東京大学大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 修士2年
アカデミアでは「スマートシティでの自律走行」と題して協調型自動運転の研究に従事。
一般社団法人学生web3連合代表理事。東京大学最大のブロックチェーンエンジニア団体である本郷web3バレーのCo-Founder/現事務局総責任者。
国内最大規模の学生ハッカソンとWeb3 Summitを代表として実施し、省庁や企業と連携したイベントの責任者を務める。東大松尾研の開講するGCI2023ではデータサイエンスを活かしたBizDevに取組み上位1%の優秀修了生を受賞。認定支援機関の支援担当者として中小企業の事業コンサルティングを2年間経験。「研究開発から社会実装へ」をテーマに自身でもAIの開発に取り組む。

左)AIビジネス研究会 代表 小泉昌紀

修士(工学)。慶應義塾大学理工学部管理工学科,理工学研究科修士課程修了。日本工業大学専門職大学院客員教員,中小企業診断士。日本電気株式会社において海外事業責任者,ベンチャー設立を経て,AI技術を用いた新規事業開発に従事。

小泉代表)
私たち診断士は中小企業を支えたいという志で活動していますが、実態としてはいわゆる”よろず相談”に陥ってしまうことが多いのです。このギャップを埋めたくて立ち上げたのがAIビジネス研究会です。

小川社長)
実は先ほど中小企業診断士が中小企業を支える専門家として誕生するまでのバックグラウンドを小泉さんからお聞きしました。一方で、確かにこれまでは日本の政策として先進国の中でもより零細企業を救うような制度が整っていたイメージですが、来年以降は中堅以上の大きな企業への投資に力を入れるというようなことを聞いています。そうなってくると過去に中小企業診断士という資格が作られた時の政府の意図とは少しずれてきますよね。

小泉代表)
そうなんです。ですから、私個人の意見ではありますが、あらゆる士業がそうであるように、やがて中小企業診断士の資格も(本来の目的の意味では)いずれ役割を終えるかもしれません。とはいえ、新しい技術は中小企業、スタートアップから生まれます。大企業内で新規事業を立ち上げるのは、組織の壁が多く、容易ではないので、日本の将来のためには、新しい技術を生み出す中小・ベンチャー企業の支援は欠かせません。

小川社長)
なるほど。一方で、支援するためには、ベンチャーや最新技術への理解が不可欠ですよね。

小泉代表)
ええ、まさにそこなんです。いきなり「フルスタック」とか「GPU」とか「ハルシネーション」などと言われても、DX/AIに親しんでいないと、すぐにはピンと来ないこともありますよね(笑)。そこで、ビジネスパーソンとDX/AI技術者をつなげる場をつくりたくて、6年前にAIビジネス研究会というコミュニティを立ち上げました。この場には、メーカー、流通、金融、メディア、コンサルティングなど様々な業種のビジネスパーソンに加えて、DX/AIの実務家など様々なメンバーが参加しています。定期的にベンチャー企業の方々を招いて勉強会を行い、実践的な知識を深めています。

小泉代表)
本当にこの日を待っていました!
2018年から松尾豊先生(東京大学教授、AI(人工知能)研究の第一人者)の書籍でディープラーニングの勉強を始め、JDLA E資格を取得しました。AIをビジネスの世界に広めたいと思っていたのですが、技術論だとなかなかすぐにビジネスパーソンに理解してもらうには難しい。そこで、ビジネスのレイヤーで接続するのが良いのではと考えていました。そんな中、本郷バレー構想の中で活躍するAIスタートアップとコラボできるご縁をいただいて、楽しみにしていました!

小川社長)
自身としても本郷バレーという名は気に入ってまして(笑)
というのは、3年前にブロックチェーン技術に特化した東大生限定のコミュニティ『本郷Web3バレー』という団体を立ち上げて、本当にたまたまなのですがその前後くらいから東大のスタートアップ界隈の中で『本郷バレー』という構想が囁かれるようになって。自分のコミュニティに「本郷web3バレー」という名前をつけるくらいですから、『本郷バレー』という呼び名も当然しっくりきています。
特徴としてですが、生成AIが浸透し始めた1年半前くらいから耳にするようになった言葉でして、その時期からスタートアップが数社〜数十社単位で生まれるような界隈になりました。

小川社長)
私たちでも把握できていないくらいで、100社に迫る勢いだと思います!


小泉代表)
このスピード感にはまさにバレー感がありますよね!まるでシリコンバレーのように、イノベーションが連鎖的に生まれているんですね。

小泉代表)
中小企業診断士に関わらず、すべてのビジネスパーソンにとってAIは必要です。
AIは業務の効率化だけでなく、生活の中にも浸透していくでしょう。この進化にうまく適応しなければ、スキル面でも生産性でも世界との圧倒的な差がついてしまう。そのため、私たちはセッションを通じて、チームでAIを活用する実践的な取り組みを行っています!

小川社長)
いままではWord・Excelがあって、RPAなどの自動化ツールがあって、機械学習があってというように同じDXに関わる領域の中でもカテゴリーが分かれていたのですが、生成AIはその全てのカテゴリに網羅的に関わってくる存在になりつつあります。そうなってくると、どんな企業を支援する診断士の方出会っても今後必ず生成AIに関する知識が求められるようになるのではないかと感じています。
また、今後地方の人手不足が解決する未来は恐らくないと考えた場合に、中小企業が人手不足を補う解決策はDX一択になり、DXの実現のために生成AIが必ず関わってくる。だからこそ、中小企業を支援されている中小企業診断士の皆様だからこそ、より知っておかなければならない内容だと感じました。

小泉代表)
これまではAIを扱うには数学的な知識が不可欠でしたが、今ではビジネスパーソンもAIを活用できる時代になりつつあります。文系の方にとっても、AIはむしろビジネスで力を発揮するチャンスです。

小川社長)
今後もAIは技術的には進化し続けると思っているのですが、その業界で戦っていこうとしている我々からすると、技術の高度化だけでなくユーザーがAIを意識せずに自然に活用できるサービス開発を目指すことも重要だと考えています。技術自体は間違いなく発展していくので、あとは現代のインターネットのように仕組みを理解せずとも直感的にアクセスできるユーザーインターフェースやハードウェアにもこだわらないと差別化できないなと思っています。

小泉代表)
ソフトもハードも一貫して提供できなければ、単なる部品の一つになってしまうということですね。そういった中で、御社の強みとはどんなところでしょうか?

小川社長)
2つあって、1つ目は技術的な知見があり、やり切る力もあるところ、技術力ですね。
2つめは国語力。先ほどの話にも出たとおり、これからは汲み取る力などの国語力・提案力・人間味が大事だと思っていて、当社のメンバーは国語も強いんです(笑)

小川社長)
弊社の商品には「補助金Express」というAI補助金プラットフォームもあるので、私たちがいままで頑張ってきたAIと補助金の2つのテーマを共通言語としてお話しできるのではないか、一歩先が見えるのではないかと期待しています。これからもどんどんコラボしていきたいと考えています!

講義では、小川様に『東大発スタートアップが語るAIと創る未来の話』として、そもそも“プログラム”とは何か?AIの“学習”とは何か?従来のAIと生成AIについてなどの基本的知識から現在の生成AIの種類と潮流についてもお話しいただきました。

小川様の会社で開発されているAIツール『補助金Express』についてもさすが中小企業診断士、みなさま興味深く聞いていらっしゃいました!

その後、AI研メンバーによる『AI事業者ガイドライン(第1.0版を読んでみた)』の発表、そして小泉代表による『明日から使える生成AI連続講座』の第1回、生成AIを使った働き方を体験してみよう!が開催。

生成AIへの意識調査分析結果をもとに、グループ演習『横浜のレトロな企業・施設を活性化する企画を考えよう』ということでグループに分かれ、実在する横浜の施設をもとにペルソナ設定をし、“人間の知性を入れながら”を基本にニーズの深掘りを行いました。

ワークではチームで考え実践的にどのように生成AIを使うか?ヒントをえながら熱い議論が行われました。

10月は『明日から使える生成AI連続講座』第2回が開催されます!
生成AIを中小企業診断士として実用的に練習できるチャンス! これからの日本を元気にするためのAIビジネス研究会から目が離せません!!

文責:伊藤晶美