2025年5月17日に開催されたAIビジネス研究会定例会では、「AIが切り拓く社会の未来」をテーマに、未来予測レポートAI2027の深掘りと、共生社会を実装する最新事例の講演、さらには参加型のワークショップを実施しました。
講演1)緊急:話題の未来予測レポート AI 2027 を読み解くパート1 1950~2020年のAIの歴史を概観する
講師:小泉 昌紀(AIビジネス研究会 代表)

小泉代表より、未来予測レポート AI2027を読み解くためのパート1として、1950年から現在までのAI技術の進化と、それが社会に与えるインパクトについて講演が行われました。
アラン・チューリングから始まり、ネオコグニトロン、ディープラーニング、トランスフォーマーといった基盤技術がどのようにAIの発展を支えてきたかを説明しました。その上で、GPT-4を超えるAGI(汎用人工知能)を私たちがどのように受け入れていき、それによる社会的影響を展望しました。続けて演習では、2027年に向けて準備することについて、グループワークを行いました。
特に印象的だったのは、「AIの民主化」と「責任ある利活用」の両立を目指す国家戦略の視点であり、高校生へのAI教育の義務化や、国産LLMの開発など、日本の未来を支える基盤構築についての提言には多くの参加者が関心を寄せていました。
講演後の感想では、「AIが単なる技術ではなく、社会の在り方そのものを問い直す存在であることに気づかされた」「技術の進歩を“他人ごと”ではなく“自分ごと”として受け止め、私たち一人ひとりがどう関わるかが問われている」といった声が聞かれました。AI2027については7月度の定例会で後半を行いますので、楽しみにしたいと思います。
講演2)障がい者支援を価値に変える~困っている方支援プラットフォームのサービス~
講師:株式会社 袖縁 代表 友枝ねこ紋次郎敦 様

続く講演では、視覚障がい者の「駅が怖い」という一言から始まった、株式会社 袖縁の共生社会実現プロジェクト「袖縁」について、友枝代表より紹介がありました。
このアプリサービスは、要配慮者(障がい者、高齢者、ベビーカー利用者、外国人旅行者など)が、スマートフォンを介してその場に応じた適切なスタッフ(駅員・店員など)と直接つながる「どこでもインターホン」機能を中心に設計されています。
講演では、「福祉=特別な支援」という従来の考え方ではなく、日常の延長線上に位置づけるという発想の転換が紹介されました。助ける・助けられるの非対称な関係ではなく、“対等な市民同士のつながり”を実現する仕組みとしての意義が強調され、多くの参加者に深い印象を与えました。
また、ESGやSDGsとも連動するこの取組が、13兆ドル規模の経済的価値を創出しうる巨大市場である点も紹介され、「社会課題を価値に転換するモデルケース」として注目を集めているとのことです。
参加者からは、「社会の在り方を問い直す本質的な取り組みだと感じた」「心のバリアを溶かすという考え方に共感し、自分も身近な行動から実践していきたい」という感想が寄せられました。
演習1)2027年のサービスコンセプト開発
講演2の内容を受けて、参加者によるグループワークを実施しました。今回の演習テーマは「2027年に向けた『袖縁』のあらたな価値の可能性とその未来像の創造」です。複数のチームに分かれ、具体的なアイデアの洗い出しと、将来のサービス像のビジュアル・メッセージ化に挑戦しました。2027年の可能性を描くワークショップでは、健常者や観光客も使えるユニバーサル化、ポイント制度やレビュー機能による利用促進、クラウドファンディングや広告連携による収益化など、多様な提案が出されました。続いて、それらを踏まえた未来のサービス像を「画像+メッセージ」で表現。「声なき声に応える社会へ」「商店街がつくる支援の輪」「つながる安心、広がる体験」など、温かみと実用性を両立したビジョンが多数生まれました。参加者は障がい者支援の難しさも含めた本質を再認識し、技術と地域が交わる共生の未来を考える貴重な機会となりました。


今回の定例会では、AIの発展が技術の枠を超えて「社会の仕組み」「人と人との関係性」にまで影響を及ぼすことを実感できる内容が詰まっていました。技術史とAIトレンドを踏まえた講演と、地域に根ざした共生社会の実装モデルの紹介という2本立ては、理論と実践の双方から学びを得る貴重な機会となりました。
次回の定例会は6月に開催予定です。引き続き、「未来の働き方と社会」を見据えた議論を深めてまいります。