2024年11月16日にZoomにて、「製造DX特集」をテーマに定例会を開催しました。製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の持続可能性を高めるために不可欠な取り組みです。しかし、現実には多くの企業が課題に直面しており、その重要性を認識しつつも一歩を踏み出せない状況が続いています。今回の定例会では、2名の会員が実際の企業事例を基に、DX推進における課題とその克服事例を共有し、理論だけではない「現場のリアル」を学ぶ貴重な機会となりました。
講演1)Z世代の消費トレンドを反映した乳製品の未来像
北村会員より、Z世代向け乳製品開発における製造DXの具体的な取り組み事例について講演がありました。
日本の農業や畜産業はいくつも課題を抱えていますが、特に農業従事者の減少と高齢化により、国産乳の安定確保が難しくなっています。このような厳しい環境の中で、限られた乳資源をZ世代向けの商品開発に重点的に活用し、新規顧客を開拓する戦略を選択されたとのことでした。具体的には、「食感」にこだわったヨーグルトの開発事例が紹介されました。
北村会員は最後に「Z世代を象徴する言葉(価値観)としては、デジタルネイティブ、多様性、コスパ・タイパなど多数あるが、何を選ぶかよりも選んだものを追及することが成功の鍵」と強調しました。
講演2)DXプラットフォーム ~人材育成と開発を支援するプラットフォームとは~
山本会員からは人材育成分野でのDX活用事例について講演がありました。日本企業では製造現場での業務が属人的な対応になることが多いため、システム全体の最適化ではなく個別システムごとの部分最適化に留まりがちです。その結果、DX推進が停滞するという課題がありました。この課題を解決するために、山本会員は、「DXメタバースプラットフォーム」を構想しました。そのポイントは次の3点です。
- 既存システムに縛られないデータ定義で統合データベース(ワンデータベース)としてまとめる。このワンデータベースは“部門”と“業務”という2つの切り口でデータ分析ができる汎用多次元データ構造を保有するため、企業における組織の構成や設計に合致した構造体にカスタマイズが可能
- 生成AIや大規模データ解析を活用することで、迅速な課題分析が可能になる
- 業務実績や社員の目標管理データなどもワンデータベースで管理することで分析が可能となり、社員へ適切な教育プログラムを提示してスキルアップを加速
特に2については生成AIを使いこなす(回答精度を向上させる)ためのコツについて知見の共有がありました。生成AIをうまく使いこなせない人はキーワードの設定が間違っていることが多く、効果的な活用のためには基礎力、応用力、考え方を磨き、シナリオ(仮説)を踏まえた自分に合ったキーワード設定が重要とのことでした。
講演3)明日から使える生成AI連続講座 第3回 ~顧客の真のニーズを探索しよう~
AIビジネス研究会の小泉代表による明日から使える生成AI連続講座の3回目が行われました。テーマは前回に引き続き、「生成AIの背景とプロンプトのコツ」でした。
今回は企業診断で使用されるフレームワーク、ファイブフォース分析やSWOT分析を生成AIでどのように行うかをハンズオン形式で学びました。参加者は実際に自分たちが精通している業界を対象に分析を行い、生成AIによる分析精度の高さに驚いた様子でした。
その後のグループ演習では、横浜の具体的な企業を題材に生成AIを活用して市場機会や想定利用者を設定し、顧客ニーズを引き出すためのヒアリング項目を検討しました。
今回の定例会では、実例を通じてDX化の重要性を再認識できました。また、生成AI連続講座では生成AIの有用性を感じ、あらためて使いこなすべきツールだと実感することができました。
次回の定例会は12月21日(土)であり、小泉代表による生成AI講座の4回目も行われますので、皆さまのご参加をお待ちしております。
文責:高田会員