【2026年6月定例会】グローバル特集

2026年6月20日(土)、かながわ県民センターにてAIビジネス研究会の6月定例会が開催されました。今回は3名の会員による多彩な講演と、Claude Cowork活用に関する2本立てのワークショップを実施。グローバル人材戦略から鉄鋼業のDX、そして「AI時代に自分らしく生きる」という問いまで、幅広いテーマで議論が深まった一日となりました。

講演1)ベトナムにおける高度人材活用最前線

講師:山川 敦士(AIビジネス研究会会員)

会計やSCMソリューションのコンサルティングを手掛けた後、「日本企業の競争力強化とアジア人材への機会提供」を使命に2023年にアクセス・インテリジェント・ソリューションズ株式会社を創業した経緯を踏まえ、ベトナム高度人材の最前線を鮮やかにマッピングしてくださいました。

ベトナムは人口約1億人、平均年齢31歳という人口ボーナス期にあり、ICT人材は150万人、ソフトウェアエンジニアだけでも53万人を擁します。日本のエンジニア平均年齢が約40歳に対し、ベトナムは約30歳。しかも60.5%が日常業務で生成AIを活用中と、学習速度・適応力でも日本を上回るデータが示されました。

「なぜ日本にベトナムなのか」という問いへの答えも明快でした。欧米IT市場はインドが圧倒的シェアを握り参入余地が限定的である一方、日本市場では2030年に80万人のIT人材不足(経産省)が見込まれ、ベトナムはオフショア委託先としてインドに次ぐ第2位の地位を築いています。時差わずか2時間・勤勉さ・集団重視・柔軟な仕様変更対応・漢字文化圏という6つの文化的親和性も、日越協業を後押しする強みとして挙げられました。

一方で、IT業界離職率24%・3〜5年で給与2倍という現実、N2以上の日本語人材の希少性と仕様認識ギャップによる品質問題という5大課題も包み隠さず共有いただきました。締めくくりの「活用6原則」では、「コスト削減から成果共創へ」「ブリッジ人材への先行投資」「AI領域こそ今ベトナムを選ぶ最大の理由」など、実務で即使えるフレームワークを提示。参加者からは「ホーチミンでなくハノイに現地法人を設立した理由」などの質問があり、ベトナムの都市の特徴に基づいた説明がありました。

講演2)鉄の復活に向けて〜日本の鉄鋼業が生き残るためにAIに期待すること〜

講師:舘 正尚(AIビジネス研究会会員)

鉄鋼業界で30年以上にわたり、経理・財務・グループ会社管理など管理部門を担当してきた舘会員。自身が長年身を置いてきた鉄鋼業界の現状と未来について、豊富なデータと実務経験を交えながら語ってくださいました。

「鉄は産業の米」と呼ばれた時代から現在に至るまで、鉄は資源量・強度・コスト・リサイクル性のバランスに優れた社会基盤材料であり、日本の産業や暮らしを支え続けています。一方で、2025年の日本の粗鋼生産量は8,067万トンと1968年頃の水準まで落ち込み、中国・インドの台頭や国内需要の縮小、人材確保の難しさなどを背景に、日本の鉄鋼業は大きな転換点を迎えていることが紹介されました。

特に印象的だったのは、「暗黙知」に関する実務経験です。舘会員は、鉄鋼業では同じ規格・仕様の製品であっても、製造プロセスにおけるわずかな条件の違いが品質に大きな影響を及ぼすことがあると、自身の経験を交えながら紹介しました。その経験を通じて、「鉄鋼業はデータや仕様書だけでは成立しない産業であり、人の経験や勘・コツに支えられている」という気づきを得たこと、そしてそれがSWOT分析で示した「技能の属人化・暗黙知依存」という課題につながっていることが語られました。

だからこそAIに期待するのは、「熟練技能を可視化し、再現可能にし、次世代へ受け継ぐこと」です。LLMを活用した現場ナレッジの検索・対話化、リアルタイムAIコーチ、スキルマップによる成長の見える化などを、「AI=技能の翻訳装置」と位置付ける視点は、製造業DXの本質を突いていると感じました。 最後に、「AIが人を減らす道具ではなく、人と産業の可能性を広げる存在として活用される未来を期待しています。」に、会場からは大きな拍手が送られました。

講演3)夢を諦めない〜オーストラリアから始まった何者かになる挑戦〜

講師:川腰 達也(AIビジネス研究会会員)

「AIを一切使わず、熱量のみで話します!」という宣言から始まった川腰会員の講演は、今定例会で最も異色——そして最も心に刺さるものとなりました。

10代でオーストラリア・ブリスベンに留学し「いつか何者かになりたい」と夢を抱いた川腰会員、20代前半をなぁなぁと(自己分析)過ごした後、ある会食に同席した中小企業診断士(のちの師匠)との出会いが人生の転換点になったと話します。「達也っていい名前だね。親御さんはどんな思いでこの名前を付けたんだい?」——その問いかけに何も答えられなかった自分に気づき、丸10年・月1回2時間の「激動の時代を乗り越える基礎力講座」を師匠と続けたといいます。 現在は税理士法人での実務、コンサルティング/イベント企画等の個人事業を柱に活動しながら、「共越師」という経営理念のもと中小企業経営者に伴走する川腰会員。「AI時代に勝つには自分らしさを出すこと。自分らしさは自分が歩んできた道からしか生まれない」という締めの言葉は、定例会に人間的な軸を与えてくれました。「自分の葬式に500人呼びたい」という目標も、笑いとともに参加者の記憶に深く刻まれたのではないでしょうか。

ワークショップ1)Claude講座〜今からでも間に合う基本のキ〜

担当:佐々木 太郎(AIビジネス研究会会員)

休憩をはさんでワークショップパートへ。佐々木会員が15分でエージェントAIの最新地図を解説しました。 「AIは回答から実行へ」というコンセプトのもと、Claude Cowork・Google Antigravity・Manus AI・OpenAI Codex・OSS型(OpenClaw / Hermes Agent)の5つを「自分のPCフォルダ・Web参照→Office文書生成」という視点で一気に比較。それぞれの強みと注意点を整理したうえで、「非エンジニアの診断士・コンサルにはClaude Coworkが現実的な選択肢」という結論を示しました。

後半では、Claudeを使う上で必ず確認すべきセキュリティ設定4点(データ学習オプトアウト・シークレットチャット・Memory管理・決済情報管理)を丁寧に解説。クライアント情報を扱う診断士・士業にとっては特に重要な内容でした。「2026年がエージェントAI普及の転換点。今のうちに使い始めないと競合との差が急速に拡大する」というメッセージが、続くワークショップへの期待感をさらに高めました。

ワークショップ2)Claude Coworkでここまでできる〜中小企業診断士・コンサルタントのためのAI業務改革セミナー〜

担当:笠置 晶(AIビジネス研究会会員)

定例会のメインイベントともいえる60分のハンズオンセッション。笠置会員がClaude Coworkの本質から実践まで、実際に手を動かしながら案内しました。

冒頭の問いかけは鋭いものでした——「診断士・コンサルの価値は、作業量ではなく問い・判断・提案にある。なのになぜ、Webでの企業調査・議事録整理・提案書のたたき台作成といった時間を奪われる作業に追われているのか?」。その答えとして提示されたのがClaude Coworkです。Claudeには3つの使い方(Claude.ai・Claude Cowork・Claude Code)があり、非エンジニアがPC作業をそのまま任せられるのがClaude Coworkだと整理されました。 参加者は各自のPCでClaude Coworkを立ち上げ、笠置会員から事前に提供されたファイルをプロジェクトに取り込みました。ハンズオンは①進行ガイド確認、②Gmail/Slack等のコネクター接続、③ペルソナ設定、④調査テーマとレポート設計、⑤スキル登録の各ステップから成り、調査作業をClaude Coworkに任せる実践的な内容でした。提供ファイルには笠置会員が作成した「顧問先の診断レポート作成やアクション優先順位付け作業」をClaude Coworkに任せる内容も含まれており、実際のコンサルティングでもすぐに活用できる大変貴重なものでした。

「コンサルは手を動かす人から成果物を設計・評価する人へ変わる」——AI時代のコンサルに必要なのは作業量よりも問いの設計と成果物の評価力だというメッセージが、参加者の意識に強く働きかけた1時間となりました。

おわりに)

ベトナムの若きエンジニアが世界を変えつつある現実、30年の暗黙知を未来へつなごうとする鉄鋼マンの覚悟、オーストラリアの留学から紡いだ自分らしさの物語——今回の定例会は、テクノロジーの話でありながら、その根底に人間が貫かれていた一日でした。

ワークショップを通じて体感したのは、「AIを使いこなす」ことよりも「AIに何をさせるかを設計できる人間になる」ことの重要性です。ツールは進化し続けますが、問いを立て、判断し、相手に届く提案をする力は、やはり人間にしかつくれません。 次回の定例会でも、ぜひまたお会いしましょう。

文責:佐々木会員