2026年4月18日(土)、中小企業診断士神奈川県協会 AIビジネス研究会の4月定例会が開催されました。新年度のキックオフとなる今回は、研究会の2026年度戦略発表に加え、ゲスト講師による「大手IT企業の社員がなぜ幕張ブルワリーに挑戦したのか?」という脳科学の知見に基づくビジョン形成に関する講演2と「人を惹きつける投稿をどのように作るのか ~SNS実践から学ぶ魅力的な発信の技術~」という講演3でした。
いずれの講演も「脳と心」の仕組みに深く根ざした内容であり、参加者全員でそれらを体感するワークショップを行って、非常に濃密な内容となりました。
講演1)AIビジネス研究会 2026 Strategy
講師:小泉 昌紀(AIビジネス研究会代表)
2026年度のAIビジネス研究会のスタートに際し、小泉代表より2025年度の活動を振り返りつつ、2026年度の研究会戦略が発表されました。
小泉氏は、AIの本質を「知能」ではなく「予測コストを劇的に下げるもの」と定義しました。予測コストが下がることで、企業経営は「どれだけ早く、多く試せるか(仮説と実験の試行回数)」が競争力の源泉に移行すると強調しました。ただ、効率化を追求するだけで経営が改善するわけではないと説きます。
その上で、診断士に求められるのはAIを「使う力」ではなく、AIで「価値を出す力」であるとし、以下の2026年度基本方針を打ち出しました。
・診断士向けの生成AI利用法の確立
・会員のアウトプット機会を増やし、スキルの底上げを図る
・他団体や企業と連携し、日本の最先端に触れる

講演2)大手IT企業の社員がなぜ幕張ブルワリーに挑戦したのか?
講師:富木 毅(AIビジネス研究会会員)
大手IT企業に在籍しながらクラフトビール醸造会社「幕張ブルワリー」を起業した富木会員が登壇し、「自分らしく感じて没頭することを取り戻す」という、起業の原動力となった「自分がこうありたい状態(ビジョン)」について講演しました。
富木会員は自分らしく生きられていないと感じる中、当時通っていたビジネススクールの講師から「あなたの世界は白黒の世界です。もっと色を感じてください」とアドバイスを受けて、近所の手書きマップ作成や地元イベントでのコミュニティカフェ出店などにチャレンジしていました。
そんな中、知人がいた幸福度ランキング上位の南米・コロンビアを訪れた際に「This is the life(これぞ人生だ)」と言ってビールを楽しむ住民の方と出会ったことで、「身近にあるものを楽しむってやっぱりいい!」と再認識しました。
この体験をもとに「身近な豊かさ・幸せを感じ、人と人とが交わって新たな価値を生み出すクラフトビール醸造所+ビアパブ(Brewpub)」の設立にチャレンジする決意をされました。
このチャレンジを進める中で大切にしていたことはビジョン「身近な豊かさ・幸せを感じる世界を描く」と、「身体と心を整え、頭で考えても分からないときは体感覚で判断する」とのことで、「その人らしいビジョンを描くこととその人自身の体の感覚で答を見つけること」の重要性を説きました。
また、講演の最後には、ニューロサイエンス(脳科学)観点から人間の創造性が発散的思考と収束的思考を繰り返すと拡がることを解説し、体を使ってこれら2つの思考を生じさせることでその人らしいビジョンや体感覚から見出す答が生まれやすくなることを述べました。
「その人らしいビジョンは、自分事化した事業を創造し、他人を惹きつける」というメッセージは、多くの参加者の胸に響きました。

講演3)人を惹きつける投稿をどのように作るのか ~SNS実践から学ぶ魅力的な発信の技術~
講師:河出 なみ(AIビジネス研究会会員)
コンセプトカフェ経営支援を専門とする河出会員より、Instagram広告の実務的な改善手法が紹介されました。
まず、コンセプトカフェは、特定の価値観(メイド・悪魔・猫など)をテーマにした飲食店であり、接客体験そのものが価値です。そのため、キャスト自体が商品であり、集客の中心となる業態であると説明がありました。
本講演では「フィットネス×コンカフェ」の事例を用い、当初0.95%だったクリック率(CTR)を、ターゲットの明確化とクリエイティブの改善を繰り返すことで5%まで向上させたプロセスを具体的に解説しました。
成果を出すためのポイントとして以下の3点を挙げました。
1.ターゲットを明確にする。
2.伝わりやすいクリエイティブで興味を引く。
3.結果を分析し、改善を繰り返す。
AIを活用したコンテンツ生成が普及する中で、いかに「人の心を動かす」発信を行うかという視点は、実務に即戦力となる知識でした。

ワークショップ)自分プロデュースと新店舗企画
講演の後は、学んだ内容を即座にアウトプットするワークショップが行われました。
まずはリストの中から自分が大切にしている価値観と近い言葉を5つ程度選び、その言葉を使って「自分がこうありたい状態(ビジョン)」を考えるワークショップが行われました。
続いてチーム内でメンバーが考えたビジョンを共有し、そのビジョンを達成できる新店舗のコンセプト企画、新店舗のオープン広告デザインワークショップを行いました。
30分程度のワークショップでしたが、各チームからは、AIによる画像生成なども活用した、個性的で魅力的な広告案が次々と発表されました。




まとめ)
今回の「脳と心」特集では、2つの講演が異なる角度からテーマに光を当てました。富木会員の講演は、脳科学者自身が「感じる力」を取り戻す過程でビジョンを描き、事業を起こした実体験でした。河出会員の講演は、Instagram広告という視点から「人の心を動かすコンテンツ」を実証し、AIには代替できない人間の共感力の重要性を示しました。AIが普及する時代だからこそ、「脳と心」への理解が診断士の価値創出に直結すると実感できた定例会でした。
AIビジネス研究会では、毎週金曜日の朝に「統計・データサイエンス分科会」を開催するなど、学びの場を広げています。今後も新たな価値を創造する活動を続けてまいります。


文責:佐々木会員、高田会員


